有機元素化学研究室
Institute for Chemical Research, Kyoto University

高周期14族元素間三重結合化合物

アルキンの高周期類縁体 “重いアルキン”

 アルキンの高周期類縁体であるジメタリンは、その特異な電子状態、構造への関心から古くから盛んに研究が行われている化合物群である。しかし、その実際の合成は21世紀を迎えてからあり、安定な化合物としての合成例は少なく、その性質を明らかにするのに十分ではなかった。当研究室においてもかさ高い置換基を用いることでケイ素類縁体「ジシリン」や、ゲルマニウム類縁体「ジゲルミン」の合成・単離に成功し、実験化学および理論化学の観点からその三重結合性について明らかにしている。

ジゲルミンの反応性

 安定なジゲルミンAr-Ge≡Ge-Ar(Ar:かさ高いアリール基)とアルケンやアルキンとの反応によってユニークな可逆的結合活性化が起きることを見出した。エチレンとの反応では、エチレン1分子が形式的[2+2]環化付加した「1,2-ジゲルマシクロブテン」に、さらなるエチレンが付加することで、速度論的に、そして熱力学的に安定な異なる二種類の生成物を与えることを明らかにした。
 アセチレンとの反応では、「1,4-ジゲルマバレレン」の副生を伴って
「1,2-ジゲルマベンゼン」
が生成することを見出した。1,2-ジゲルマベンゼンは、Ge=Ge部分が非平面構造を有しているにもかかわらず、十分な芳香族性を示すことが分かった。